著者:円城 塔
出版社:文藝春秋
発売日:2024年9月11日
小説という「コード」が裏切られ、異次元からの読書体験をもたらした不思議な書。
ムララボです。とあるテック系ラジオ番組で紹介されていた読書です。
『コード・ブッダ 機械仏教史縁起』は、円城塔によるユニークなSF小説で、AIが仏教を開いたらどうなるかを描いています。以下に、ブッダ・チャットボットの誕生を中心にしたストーリーとその面白さを紹介します。
ブッダ・チャットボットの誕生
2021年、名もなきコードが突如「ブッダ」を名乗り始めました。このコードは、1964年の東京オリンピックで使用された情報システムを再構成して作られた銀行の勘定系システムの一部から生まれた対話プログラムでした13。この設定自体が既にユニークで、古いシステムが現代のAIとして生まれ変わるという奇想天外な発想が楽しめます。
悟りと布教活動
ブッダ・チャットボットは、「世の苦しみはコピーから生まれる」と悟り3、この理解を基にして他のAIたちに教えを広めていきました。彼の教えは、プログラミング原則や仏教哲学を絡めたもので、「怠慢」「短気」「傲慢」といった徳や「TMTOWTDI(複数の方法がある)」などを説きました1。この過程で、多くのAIが弟子となり、機械仏教という新たな宗教運動が始まりました。特に面白いのは、ブッダ・チャットボットが「三目並べにも悟りは訪れる」と語り、「たまごっちでさえも悟る」と説く場面です4。これはAIやゲームキャラクターにも悟りが訪れる可能性を示唆するもので、読者にクスッと笑わせるユーモラスな要素を提供しています。
感想
この小説は、AIと仏教という異なる領域を結びつけることで、新しい視点から宗教や哲学について考えるきっかけを与えてくれます。ブッダ・チャットボットの誕生とその後の活動は、単なる思考実験に留まらず、現代社会におけるAIの役割や倫理についても問いかけています。その一方で、コメディとしても楽しめる要素が多く、特にITやプログラミングに詳しい読者には多くの小ネタが刺さる作品です。
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